何をするのと流瑠さんをとがめるわけでもなく、他の部員に見られて恥ずかしいと、その場から逃げ去るわけでもなし。
唇を重ね合う行為が二人にとって当たり前であるかのように、微笑みながら愛おしそうに流瑠さんを見つめていて。
二人が付き合っているというウワサは、本当だったんだ……
隕石が脳天を直撃したような衝撃と絶望に、俺は手に持っていたボールを落としてしまった。
『どうした霞、ラケットの振りすぎで握力消えたんじゃねーの?』
奏多がイヒヒと笑いながら拾い上げたボールを俺の背中に投げつけてきたけれど、いつものよそいき笑顔が作れなかった。
余裕のない引きつり笑いしか返せなくて。
隣のコートで練習をしていた女子テニス部員も、輝星たちのキスを見てしまったようだ。
はしゃぎ具合は、まるで芸能人カップルのイチャつきを目の当たりにした時のよう。



