「同中って言っても、しゃべっったことないやつなんてザラだよな。俺のいた中学なんて10クラスもあったし、顔見ても誰ってやつ多いわ」
「奏多、今日も送ってくれてありがとう。もう帰ったら? バスもうすぐ来るし」
聞き耳を立てながら、霞くんは奏多くんともっと一緒にいたいんじゃないの?と勘ぐってしまう僕。
「いつも俺にバスが見えなくなるまで見送らせといて、今さらなんだよ」
「見送りなんてお願いしたことはないよ」
「オマエの笑顔が無意識に俺の足を固めてんだよ」
「なにそれ、罪のこすりつけにもほどがあるでしょ」
霞くんの笑い声が響いている。
楽しそうで何よりだ。
なんて心の中で強がってはみたものの、敗北感がぬぐえない。
僕の感情は、いつ雨が降ってもおかしくないほど荒れている。
涙腺が刺激され、鼻がしらがツンとうずいて、雫が製造されそうで。
バスが来るまでの間、この場から逃がしてくれるヒーローが現れてくれることを、僕は折れそうなくらいひ弱な月に懇願することしかできなかった。



