上昇してしまう体温を下げたくて、僕はさりげなく霞くんの腕から逃げ出した。

 霞くんの真ん前に立ち、見上げるように大好きな瞳を見つめる。


 「お昼……約束通り作ってきたよ……」
 
 「ありがとう輝星、俺の分もお弁当作るの大変だったでしょ?」


 ううん、そんなことない。


 「楽しくてたまらなかった」

 「ほんと?」

 「僕はね、作った料理をいつか霞くんが食べてくれたらいいなって思って調理部に入ったんだ」

 「栄養士になりたい理由も俺だったりする?」と真剣な顔で聞かれ、僕はあごをコクりとさげる。

 「スポーツを頑張る霞くんを、食でサポート出来たらいいなって。あっそれだけじゃないよ。霞くん、あの火事以来、火を見るのが怖くなっちゃったでしょ。僕が火の中に飛び込んじゃったから……」


 責任を感じていて……


 「俺のためだったんだね」ともらした霞くんの表情は悲しげだった。
 

 そんな顔をしてほしくない。

 僕の前では楽しそうに嬉しそうに笑っていて欲しい。


 「あっ実はね、カステラを作るのもうまくなっちゃったんだよ。僕たちのことを流瑠ちゃんがカステラカステラって言うから、特別なお菓子って僕のなかでなっちゃって」