攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜


 怒鳴られるかもという不安は薄れたけど、食べようとしている様子もない。
 なぜかディランはジッと固まったままテーブルの上のクッキーを凝視している。



 何? 何?
 これはどういう反応なの!?



 チラッと背後にいるビトに『どういう状況!?』と目で合図を送ったけれど、『さあ』とでも言わんばかりに首を傾げられただけだった。
 こちらから何か言ったほうがいいのか迷っていると、やっとディランが口を開いた。


「……これは、なんだ?」

「!」



 喋った! 怒ってはなさそう?



 苛立ちは感じないディランの質問に、私は内心ホッとしつつ急いでクッキーの説明をする。


「あの。ワトフォード家のみなさまをイメージして、クッキーにしてみました」

「……俺たちをイメージして……? これは、俺たち兄弟なのか?」

「はい。左から順番に、エリオット様、ディラン様、レオン様です」

「これが……エリオット……?」


 いつも攻撃性が強く迫力のある話し方をするディランが、力なくボソボソと話している。
 その落ち着きようが逆に怖い。