「クッキーを作りたいんだけど、調理場を借りていいかしら?」
突然調理場に現れた私に、コックたちは困惑した表情をしつつも「どうぞ」とすんなり承諾してくれた。
選択肢で『クッキー』を選んだからか、偶然にも調理台の上にはクッキーの材料が並んでいる。
この家に来る前はよく孤児院でも作ってたし、クッキー作りは問題ないわ。
あとは、どんな絵を描くか決めて最適なクッキーの形にしなきゃ。
うーーん……と唸りながら、クッキー生地を作りコネコネする。
ビトは調理場の壁に寄りかかって、私の様子をジッと観察していた。
丸い形のクッキーに、猫の絵を描くとか?
でも、それなら猫の形のクッキーにして顔を描いたほうが可愛いかな?
いや。でもあの3兄弟が猫のクッキーに胸をときめかせたりする?
嬉しそうに猫型クッキーを喜ぶディラン……そんなの、想像できるわけがない。
うん。怖いわ。
あの兄弟に猫ちゃんは可愛すぎるかもね。やめておこう!
「じゃあ、どうしよう? 何がいいかな?」
生地を寝かせている間、私は部屋から紙とペンを持ってきた。
クッキーに何を描けばいいか、試しにいくつか絵を描いてみる。
犬……鳥……カッコよく馬とか?
一応、猫も描いてみるか……うーーん、どうしよう??
真剣に絵を描いている私を、ビトと数人のコックが覗き込んできた。
調理場でいきなり絵を描き始めたのだから、みんなが気になっても仕方ないだろう。



