攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜



 さっきまでブツブツ独り言を言ってしまっていたことを思い出し、今さらながら後悔する。
 きっと変な女だと思われただろうし、エリオットに報告されてしまうだろう。


「あーー……だ、大丈夫よ」

「ですが、ずっと唸っていましたよ」



 うっ! 直球で聞いてくるなぁ。



「何を作ろうか悩んでいただけよ」

「フェリシー様……絵は描けないくせに、料理はできるんですね」

「絵は描けないくせに?」



 おい。
 この付き人、失礼なんですけど!?



 無愛想なビトにムッとした瞬間、あるものが頭に浮かんだ。
 前世で1度だけ食べたことのある、可愛らしいアイシングクッキーだ。



 ……そうだ!
 字を書くんじゃなくて、絵を描けばいいんだ!



 アイシングクッキーは作り方もやり方もわからない。
 けど、溶かしたチョコを使ってクッキーに絵を描くことならできる。


「ナイス!! ビト!!」

「はい?」


 よくわかっていないビトに無理やりハイタッチさせるなり、私は選択肢『③クッキー』に触れた。
 軽快な音とともに、③の字が白く光る。


「ビトのおかげで、作りたいものが閃いたわ」

「何を作るんですか?」

「クッキーを作って、それに絵を描くの!」

「…………」


 私の答えを聞いて、ビトの顔が微妙に引き攣ったように見えたのは……気のせいだと思いたい。