「どうした? 貧乏人は自分で料理をするから、なんでも作れるんだろ?」
「…………」
「すごい料理を作って、俺たち兄弟にアピールしてみろよ」
そう言うなり、ディランは初めてビトに声をかけた。
「この貧乏人が毒を入れないよう、しっかり見張っておけよ」
「かしこまりました」
今までのやり取りの間、静かに私たちを見守っているだけだったビトは、私を一瞥することもなく即座に答えた。
私の付き人とはいえ、やはり優先順位は私よりディランのが上なのだろう。
わかっていたことだけど、迷いのない返答が少しだけ寂しい。
そんなことしないと思いますよとか、自分はフェリシー様の付き人なのでディラン様の命令は聞けませんとか、そんなこと言ってくれるわけないか……。
「俺は自分の部屋にいる。料理ができたら持ってこい」
「……はい」
ディランが見えなくなるまで見送ったあと、私は気合いを入れるために目を閉じて両頬をペシペシと軽く叩いた。
変なことで気落ちしている場合じゃない。
これも、漏れなくクソゲー仕様の最悪な結果しか出ないクソイベントなのだから。
さあ! まずは、どれを選んでも好感度の下がるこのイベントをどう回避するか考えなくちゃ!!



