攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜


 何を答えていいのかわからずフリーズしていると、ディランがゴホンとわざとらしい咳払いをしてから質問を変えた。
 どうやら自分でもおかしい質問をしたと自覚しているようだ。


「だから、その、レオンが言ってた本のことだ」

「!」


 レオンの名前を聞いて、ディランが何を聞こうとしているのかがわかった。
 きっと、私の書いている絵本のことだ。



 ……なんでディランが知ってるの? レオンから聞いたの?
 いや、それなら私にこんな質問はしないか。
 メイドか誰かに見られたのかな?



 そんなの弟のレオンに直接聞けばいいじゃん! と言いたいのを我慢して、私は冷静にディランの求めているであろう答えを口にした。


「私が書いている本のことだと思います」

「お前が……書いてる本、だと?」

「はい」


 本当はディランに話したくはないけど、ここで嘘をついたらあとで怖い。
 好感度を下げないためにも、正直に話すしかないのだ。


「なんでそれをわざわざレオンに読ませるんだ? アイツが本が好きだと知っているから、わざとそんなもの書いてレオンの気を引いてるのか?」

「違います。ジェフさんに話していたら、たまたまレオン様に知られてしまっただけです。読みたいと言われたのでお渡ししただけで……」

「はっ! どうだかな」


 ディランは鼻で笑いながら、私を見下すように目を細めた。
 私の言っていることをまったく信じていないようだ。

 

 ディランって妹弟想いだからめんどくさいんだよね。
 兄弟仲、そんなに良くないくせに。
 私がレオンに媚び売ってるって思って、不機嫌になってるのか……どうしよう。