「おい! 貧乏人!」


 書いた絵本を図書室にいるジェフさんに渡したあと、部屋に戻っている途中で背後から呼び止められた。
 私を「貧乏人」と呼んでくるのは、ディランだけだ。



 うわっ! ディランだ!
 めんどくさいヤツに捕まっちゃった!



 私の後ろにいたビトが、ペコッとディランに頭を下げている。
 ディランはそんなビトを睨みつけながら前を通りすぎ、堂々と私の前に立ち塞がった。



 な、何?



 最初に会ったときはあんなに恐ろしく感じていたディランの怒り顔も、今はそこまで怖く感じない。
 きっと、もっと恐ろしいエリオットに会ったあとだからだろう。

 自分の感情がそのまま顔に出るディランは、とてもわかりやすくてある意味安心する。


「なんでしょうか?」

「お前……本ってなんのことだよ!?」

「はい?」



 いや。お前がなんのことだ!?
 急に何!? 意味わかんなすぎるんだけど!?
 まさか、『本』が何か知らないの???



「あの、本というのは、物語とか学ぶための内容が書いてある──」

「そんなことは知ってる! お前、俺をバカにしてんのか!?」


 私の説明を遮り、ディランがギロッとものすごい形相で睨んでくる。



 えええ!? 聞いてきたのあなただよね!?!?
 なんなの、コイツ!?