ジロッと睨みつけると、ディラン兄さんはショックを受けたように顔を引き攣らせた。
今のは空耳か? とでも言いたげな顔をしている。
あんな変な物語、なかなか読めないんだから。
邪魔しないでよね。
ディラン兄さんは、怒りを通り越して困惑しているらしい。
めずらしく動揺した様子で、まるで腫れ物に触るかのように恐る恐る僕に問いかけてきた。
「レオン……。お前、いったいどうしたんだ?」
「何が? 僕、もう部屋に戻るよ」
一向に会話が終わる気配がないため、ここで本を読むのを諦めて立ち上がる。
中庭の空気が好きだったが、これなら部屋で読んでいるほうがまだマシだ。
「あっ……! おい! レオン!」
名前を呼ばれたけど、追いかけてくる様子はない。
この状態でしつこくしたところで、僕の機嫌が悪くなるだけだとちゃんとわかっているようだ。
はぁ……めんどくさい。
あの調子じゃ、きっと身代わり女のところに文句言いに行くんだろうな。
「…………」
ピタッと足を止め、後ろを振り返る。
ディラン兄さんはまだその場に立ち尽くしたままだ。
「……兄さんがあの女に何をしようと興味ないけど、もしあいつの本が読めなくなったら……怒るからね」
「!?」
さらにショックを受けた様子の兄を残し、僕は自分の部屋に向かった。



