「ねえ、ビト。ちょっと、これ読んでもらえないかな?」
「これ……って、さっきレオン様に渡していたやつですか?」
「そう。私が書いた絵本……になる前の紙」
「絵本? フェリシー様が書かれたのですか?」
コクンと頷くと、ビトは私が差し出した紙を素直に受け取った。
渡したのは桃太郎の話だ。
レオンは本好きだから絵はいらないって思ったのかもだけど、ビトなら絵があったほうがわかりやすいって言ってくれるよね?
そんな期待を込めてビトを見つめると、数枚めくったところでビトが「ブフッ」と盛大に吹き出した。
そして、一瞬で何事もなかったかのように表情を戻した。
……ん? 今、笑った?
「……どうかな?」
「発想がすごいな、と思います。ところで、この話に出てくる鬼というのはなぜこんなに小さいのですか? これなら1人で簡単に殺れそうですが」
ビトが、私が描いた絵を指差している。
「……それは鬼じゃなくて味方の犬よ。鬼はこっち」
「え? これ、木じゃないんですか?」
「…………」
犬が鬼に見えて、鬼が木に見えるってどういうこと!?
ビトの目がおかしいの!? それとも私の絵がおかしいの!?
こんな勘違いをさせてしまうなら、レオンの言った「話の内容と絵が違いすぎて邪魔」という言葉も納得できてしまう。
あまり認めたくないけど、私の画力は自分で思っている以上にやばいのかもしれない。



