「この絵、いらないんだけど」
「……はい?」
レオンからの第一声に、思わず裏返った声で返事してしまった。
自信満々だった絵をいらないなんて言われたんだから、そんな反応になっても無理はない。
「あの、いらない……とは?」
「そのままの意味。この絵が邪魔」
「邪魔!?」
絵があったほうがイメージしやすいと思って、がんばって描いたのに!?
ショックを受けた私の様子など気にする素振りもなく、レオンはパラパラとすごい早さで紙をめくっていく。
もう最後の人魚姫まで読み終わりそうだ。
早っ!!
子ども用に短い話だとしても、早すぎじゃない!?
ちゃんと読んでる!?
私の持っていた数枚の紙を、レオンが読んでいる──そんな光景を、ビトがポカンとしたまま静かに見守っている。
なぜか、私に対する警戒心が強まったようだ。
『何者なんだ、お前』という不審そうな視線をビシビシと感じる。
レオンと普通に会話する人なんて、この家じゃ兄2人と図書室のジェフさんくらいだもんね。
まあ、私もこの絵本を持ってなかったら無視されちゃうんだけど。
最後のページを読み終わったあと、レオンはスッと私に紙を返してきた。
表情が何も変わらなかったため、レオンがどんな感情で読んでいたのかまったくわからない。
「あの、どうでしたか?」
「あんたってさ……」
「?」



