攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜



 私はスタスタと足早にレオンに近づくと、選択肢の①にそっと指で触れた。


「……ごきげんよう」


 私がそう声をかけた瞬間、背後から「えっ」と驚くビトの声が聞こえた。
 
 レオンには話しかけてはいけない。
 それはこの家で働く者なら誰でも知っていることだからだ。



 まあ、こんな私がレオンに声をかけてたら、そりゃビックリするよね……。
 


 レオンの綺麗な赤い瞳が、ゆっくりと私を見上げる。
 声をかけてきた人物は誰なのか──レオンは静かに私の顔を確認してから、私の手元に視線を移した。


「……新しい話、書いたの?」

「!」



 返事してくれたっ!!



 予想通りとはいえ、それでもレオンに話しかけられると驚いてしまう。
 
 でも、私以上にビトのほうが驚いたようだ。
 クールな無表情キャラのビトが、目と口を丸くして私とレオンを交互に見ている。



 よし! 今度は話しかけて大丈夫だったみたい!
 さあ、この力作もレオンに本にしてもらうわよっ!



 ガッツポーズしたい気持ちを抑えて、私はレオンに手作りの絵本を差し出した。



 今回は絵もがんばったし、どうだ!? レオン!