失敗した! ……そう思った瞬間、うっすら浮かんでいたエリオットの笑顔がスッと消える。
「セリーヌは今日限りでクビだ。屋敷から追い出せ」
「!?」
突然の冷酷なセリフに、全員がギョッと目を見開いた。
エリオットの執事だけは、動揺することなく即座に「かしこまりました」と答えている。
……えっ?
これって、セリーヌが犯人だという答え?
何を言われたのか理解できずに固まっていたセリーヌが、ハッとしてその場に膝をつく。
「エ、エリオット様! 私をクビというのは、いったい……」
「俺に嘘をついたからだ。今すぐに出ていけ」
「ですがっ、私の実家はここから遠く、こんないきなり……」
「関係ない。……ああ。その遠くにあるお前の実家には、しっかり花瓶代を請求するからな」
高価な花瓶代を請求──その言葉を聞いた瞬間、セリーヌの顔がさらに青ざめる。
周りに立っている使用人たちは、セリーヌに同情の目を送ってはいるけれど誰も助けようとはしない。
ここでセリーヌを庇ったなら、間違いなく一緒にクビを切られるに決まっているからだ。
「じ、実家には言わないでくださいっ。そんな高価なものを買えるお金もありませんし、私が働いて必ず返しま……」
「関係ない と言っているだろう?」
「…………っ!」
エリオットの低く感情のない声に、部屋の空気が一瞬で凍りつく。
必死に懇願していたセリーヌも、周りにいる使用人たちも、全員ヒュッと無意識に息を止めていた。
まるで、少しでも音を立てたらすぐに襲ってくる危険な獣を目の前にしたような緊迫した空気だ。



