攻略不可能なクソゲーのヒロインに転生していたので、殺される前に離脱したい 〜溺愛ルート? 何それ?〜


「……フェリシーです。お呼びでしょうか?」


 オーラに圧倒され、少し震えた声でそう尋ねる。
 エリオットはそんな私の反応を見て、ニヤッと口角を上げた。


「急に呼び出してすまなかったな。君に確認したいことがあるんだ」



 ゲームのセリフそのまま……! やっぱり!



 3兄弟の中で唯一、私に笑顔を見せ丁寧な口調で話しかけてくるエリオット。
 妹のように接しろと使用人に伝え、お小遣いまでくれる。
 
 でも、それは優しさからではない。
 ただ機械的にそうしているだけで、何か彼の機嫌を損ねることがあれば一瞬にして態度が豹変する。



 前世を思い出す前は、エリオットが1番親切だと思ってたけどとんでもない!
 この人が1番怖いわ!



 そんな気持ちを顔には出さないよう気をつけ、冷静ぶって質問を返す。



「……なんでしょうか?」

「今日、大事にしていた花瓶が割れたんだ。希少価値が高い花瓶で、誰が割ったのか犯人を探している」

「そうですか」



 大事にしていた花瓶? 嘘ばっかり!
 そんなもの、本当は興味ないくせに!
 興味あるのは、濡れ衣を着せられた私の反応だけでしょ!? この悪魔長男め!


 
 もちろんそんなことは口に出せない。
 万が一言おうものなら、その場で好感度がゼロになって私は殺されるだろう。