あまりの美形ぶりに見惚れていると、興奮した女の子に後ろからドンッと体当たりされてしまった。
「きゃっ。……あっ!」
その拍子に、バッグに入れていたインクの瓶が地面に落ちる。
たまたま雑草が生えていた場所だったので、なんとか割れずに済んだようだ。
危ないっ! 割れなくてよかった!
慌てて瓶に手を伸ばすと、誰かの大きな手が私よりも先にその瓶を拾い上げた。
「あ、ありがとうござ……。……!!」
「どうぞ。大丈夫ですか?」
えっ、う、嘘でしょ!?
瓶を拾ってくれたのは、先ほどジッと見つめていたあのイケメンだ。
爽やかに微笑みながら私にインク瓶を差し出してくれている。
「すみません! ありがとうございます!」
「いえ。では」
インク瓶を私に渡すなり、イケメンはさらにニコッと笑顔を作った。
こんな眩しい国宝級笑顔を間近で見て、目が眩みそうだ。
性格までもイケメン……!!!
そんな彼を心の中で称えていると、彼と一緒にいた男性が呆れたように声をかけているのが聞こえてきた。
「ルーカス。お前は本当にいい奴だな。わざわざ拾ってあげるなんて」
「これくらい普通だろ」
「いや。普通の公爵子息はそんな親切なことしないよ。ったく」
……ルーカス?
その名前には聞き覚えがある。
エリーゼの婚約者であり、私がゲームクリアをした際に結婚する男性の名前と同じだ。
一瞬にして、イケメンに浮かれていた気分が消え去る。
公爵子息のルーカス……間違いない!
絶対にあの人だ!!
彼がエリーゼの婚約者なら、3兄弟並みに顔が整っていることにも納得できる。
モブなんかではなく、完全なるメインキャラだからだ。
あの人がルーカス……!
画像でチラッと見たことがある程度だったから、すぐにはわかんなかった!
……どうしよう!?
私がワトフォード公爵家の関係者って、バレてないよね!?



