「さあ! 書くぞ!」
あのあと、もう1件孤児院を回ってから帰宅した私はすぐに自室に引きこもった。
今日はエリーゼを見つけられなかったけど、落ち込んでいるヒマはない。
まずはシンデレラからでいいかな?
みんな気に入ってくれてたみたいだし!
勉強用にと用意されていた真っ白な用紙をテーブルに広げ、ペンを握る。
パソコンがないのは不便だけど、児童書なら手書きでも問題ない気がする。
小説みたいに文字が多いわけじゃないし、大丈夫だよね。
あっ、どうせなら絵も描いて絵本にしちゃおうかな?
あまり絵は得意ではないけど、きっと挿絵があったほうが子どもたちも喜ぶはずだ。
「よし。じゃあ、まずはシンデレラの絵を――……」
綺麗な白い紙に、サラサラとペンを走らせる。
まるで漫画家にでもなったかのような気分でとても楽しい。
早く渡したいな〜〜。
きっと喜んでくれるよねっ。
おそらく、普通は丁寧に絵を描いたならもっと時間がかかるものなのだろう。
恐ろしく早く仕上げた私は、出来上がった自分の原稿を見て歓声をあげた。
「できたっ! シンデレラ完成っ!」
一応表紙になる部分には、『シンデレラ』というタイトルとドレス姿のシンデレラの絵が描かれている。
頭の中のイメージとはちょっと違う気がするけど、まぁこれはこれで可愛いだろう。
「さてと……で、これをどうすれば本っぽくできるのかな?」
たった数枚の紙。
穴を開けて紐を通したりするのでも良さそうだけど、もっと他に適した案があるのなら聞いてみたい。
そもそも、ワトフォード公爵家ならちゃんとした本を作ることもできそうだけど……今の私の立場じゃそんなお願いはできないしなぁ。
マゼランも相談には乗ってくれないだろうし……。



