「コラッ。お姉ちゃんが困っちゃうでしょ! 早く離れて」
「えぇーーっ! だってぇ!」
茶髪の子を連れてきてくれた子が、みんなを叱りながら私の足から天使たちを引き離していく。
私はその子に向かって気になっていることを聞いてみた。
「ねえ。ここには、さっき私が話したような物語が書いてある本はないの?」
「さっきのお話のような? ……ないですね。全部長くて難しい本ばっかりです」
「そうなんだ……」
子ども向けの本がない?
たまたまこの孤児院にはないってこと? それとも、この世界に存在してないのかな?
設定の矛盾も多いこのクソゲー世界の中なら、児童書が存在してなかったとしても驚きはしない。
実際にゲーム内容にはミリも関係していないのだから、当然といえば当然だ。
こんなに喜んでくれるなら、他の話ももっとしてあげたいけど……私には時間がないし、この孤児院にだけ居座るわけにはいかないよね。
どうしよう……。
「さっきのお話の本があるの? 読みたいっ」
「わたしも!」
「どこにあるの?」
「あ、えっと、本はないみたい……」
そこまで言って、ハッとする。
頭の中に、ある言葉が浮かんでしまったのだ。
『本がないなら作ればいいじゃない』
そう閃いた瞬間、私は子どもたちに向かって満面の笑顔を向けていた。
「いえ! あるわ!」
「ほんとーー?」
「うん! すぐには無理だけど、今度持ってくるね」
「わーーい! やったぁ!!」
そうだよ! 作ればいいんだ!
薄いノートみたいなものがあれば、それに書けばいいだけだもん!
孤児院に提供するための本を作る──これで好感度が下がるとは思えないし、特に問題はないだろう。
本当なら著作権とかいろいろ問題ありそうだけど、ここはゲーム世界だし大丈夫だよね?
よし。帰ったら早速作るぞ!



