間違ってこの本を持ってきちゃったのかな?
どうしよう……こんな長編全部読めないし、この子だってきっと理解できないよね?
だったら、無理にこの本を読まなくても……。
パタンと優しく本を閉じると、私は女の子に少しだけ顔を近づけた。
「ねえ。お姉ちゃんが作ったお話でもいい?」
「うん。いいよー」
「ありがとう」
待って。素直すぎない!? なんでこんなに可愛いの!?
天使のような女の子に喜んでもらえそうな話は……と考えて、私はシンデレラを話すことにした。
「シンデレラは意地悪な継母やお姉さんたちにいじめられて……」
「でも魔法使いが素敵なドレスを……」
「そこでシンデレラがガラスの靴を履くと……」
目を輝かせたり眉を下げたり、今の感情がそのまま顔に出る女の子。
その反応を可愛いと思いながら話していると、1人、また1人と、子どもが増えていっていることに気づいた。
みんな聞いてくれてる?
嬉しいけど、ちょっと恥ずかしいな。
「……シンデレラは王子様と幸せに暮らしました。おしまい」
わあ……っと、歓声とともに拍手をされる。
気がつけば、いつの間にか10人以上の子どもが私の周りに集まってきていた。
「お姉ちゃん、すごい! すっごくおもしろかった!」
「もっと聞きたい!」
「他のお話は!?」
全員から一気にまくしたてられて、どこから返事をしていいのかわからない。
な、なんか、想像以上に気に入ってもらえたみたい!?
嬉しいものの、少し複雑だ。
褒められてはいるけれど、この話を考えたのは私ではないからだ。
前世ではみんな知ってる話なんだけど……この世界には、童話はないのかな?
そんなことを考えていると、背後からパチパチと拍手の音が聞こえた。
「すごいですね。とってもおもしろかったです」
「え……」
振り返ると、最初に声をかけた女の子と18歳くらいの茶髪の女の子が立っていた。
2人とも笑顔で私に向かって拍手をしてくれている。
茶髪の女の子……!
エリーゼ!?



