「お前、もしかしてそれでエリーゼのマネでもしてるつもりか?」
「い、いえ。そんなつもりは……」
「たかだか1ヶ月この家にいただけで、もう貴族令嬢ぶってるとは驚きだよ。まあ、それくらい図々しくなければ、元平民の分際で公爵家に住もうなんて思わないか」
「…………」
汚い害虫でも見ているような視線が、完全に私を見下しているそのセリフが、ピリピリと私の神経をすり減らしていく。
ディランはゆっくり近づいてくるなり、手を伸ばして私の首に触れてきた。
首を絞められるのかと、恐怖で体が硬直する。
なっ……何!?
「いいか。俺はお前がエリーゼの身代わりだなんて認めない。エリーゼは生きてる。もしお前がエリーゼの居場所を奪おうとしたら……そのときは容赦なくお前を……」
「…………っ」
獣のような赤い瞳にギロッと睨まれて、腰が抜けてしまったらしい。
床にペタンと座った私を上から見下ろしながら、ディランは「調子にのるなよ」と言ってマゼランとともに部屋から出ていった。
バタン!!
強く扉が閉められ、部屋に私1人になった瞬間──止めていた息を一気に吐き出す。
「……はぁっ、はぁ……はぁっ……何、今の……。ほ、本当に、首を締められるかと思っ……」
ガタガタと体が震えていてうまく喋られない。
こんなにも自分の死を身近に感じたのは初めてだ。
乱暴者だってわかってたけど、まさか実物はあんなに怖いなんて!



