俺が食べると言ったことが予想外だったのか、女は赤い瞳をさらにパッチリと見開いている。
今まで何度もこの女と話したことがあるけれど、こんなにちゃんと女の顔を見たのは初めてかもしれない。
……同じ髪色で同じ瞳の色だが、やっぱりエリーゼとは全然似てないな。
まあ、美人の類いではあるんだろうけど。
「早く食べろ」
「はっ、はい! あの、どちらを……」
「……エリオットの顔のやつ」
「はい。では、いただきます」
そう言って、女はエリオット(らしい)顔のクッキーを口に運んだ。
パキッと真っ二つに割れたエリオットの顔を見て、また吹き出しそうになったのをなんとか意地で我慢する。
そこはひと口でいけよ……!!
笑いをこらえながら、横目で女がクッキーを味わっているのを見守る。
女の後ろにいる付き人の男の肩がうっすら震えているように見えるのは、俺と同じ理由なのかもしれない。
「どうだ? 俺に食べさせられるような出来なんだろうな?」
わざとジロッと睨みつけるように問いかけると、女はパァッと顔を輝かせた。
「はいっ。とっても美味しいですっ」
「!」
初めて見た女の笑顔に、不覚にもドキッと心臓が跳ねる。
思わず女から顔をそらしてしまった。
……何考えてんだ、俺は。
一瞬でもこの女を可愛いと思ってしまった自分が悔しくて、俺は誤魔化すように自分の顔のクッキーを口に放り込んだ。



