「そこまでじゃないんですよ。もっとこう……例えば大きな敵がノックバックする程度の風圧というか」
そんなことを呟きながら、しゃがんで地面の土を掴む。
脇道に宝箱があることに気づいたからだ。
本物の宝箱かあるいはミミックかを判断するのに、土人形はちょうどいいダミーになってくれる。
向こうが擬態しているのならこっちだって偽物の人間で箱を開ければいいだけだ。
「あの宝箱を開けてきて」
作り出した土人形に指示を出しながら前を行くエルさんたちに目を向けると、岩石トカゲとの戦闘を始めたところだった。
岩石トカゲは岩石系の魔物の中ではチョロチョロと動きが速くて厄介なのだけれど、ハットリの敏捷性があればサポートは不要だろう。
練習を繰り返しているうちに、指先からほんの少しの風が起こせるようになってきた。
たしかにエルさんの言う通り、指先ではなくて手のひらを使う方がより大きな風が起こせそうではある。
でも、手のひらを向けるような不自然な動きを見せた時点で旦那様に避けられてしまうだろう。
だから銃の早撃ちのように、動く隙すら与えずにドン!と撃ちたい。
エルさんが聞いたら「だから! 人に向けて攻撃魔法使っちゃダメだって何度言えばわかるんだよ」と怒られそうなことを考えていると、後ろひとつ結びの三つ編みにしている髪をクイクイと引っ張られた。
土人形が戻ってきたようだ。
せっかくいま何かを掴みかけているところだったのに、集中力がそがれてひらめきが逃げていこうとしている。
「ちょっと待っててね」
そうだ、あの夜会のバラ園ではどうやったんだっけ。
旦那様と一緒にあの衝撃波を発動した時は、その前段階として指先に「怒り」が溜まっていた。
負の感情の揺れが「溜め」につながるのだとしたら、腹の立つことを思い出すのが一番手っ取り早いかも……。
あれこれ考えていたら、今度はグイっと髪を引っ張られた痛みで現実に引き戻される。
「いたたっ! 何……っ!」
これは土人形ではないと気づいたときにはもう手遅れだった。
強い力で後ろ側に引き倒されて、後頭部が硬いものにぶつかると同時にブチっというものすごく嫌な音が耳に響く。
引き寄せる力から解放された隙に素早く上半身を起こし、飛びあがって距離を取った。
頭が軽いんだけど!?
うなじに手を当てると、そこにあるはずの三つ編みがなくなっているではないか。
恐る恐る振り返ると、わたしのおさげをむしゃむしゃ咀嚼するミミックがいる。
「なっ、なんてことしてくれたのよおぉぉぉぉっ!」
わたしの悲痛な叫び声に気づいたエルさんがこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえるけれど、状況を説明している心の余裕はない。
わたしのおさげを返せっ!
おさげをごっくんと飲み込んで、わたしに向かって襲い掛かってくるミミックに向かって怒りの一撃を放った。
「お仕置きよっ!」
ドン!
大きな音と共に人差し指から放たれた衝撃波で、ミミックの体が吹っ飛んでひっくり返った。
背中の大剣を抜き、すぐに起き上がることができずにもがいているミミックに何度も振り下ろす。
「もうやめてあげなよ、ロイと変わんないじゃん」
呆れ声のエルさんに止められるまで、ギッタンギッタンにしてやった。
ハアハア肩で息をするわたしの目の前で、ミミックの残骸がキラキラと光の粒となって舞い上がり霧散して消えていく。
「こえーな、おい」
ハットリのつぶやきは聞こえなかったことにしてあげた。
そんなことを呟きながら、しゃがんで地面の土を掴む。
脇道に宝箱があることに気づいたからだ。
本物の宝箱かあるいはミミックかを判断するのに、土人形はちょうどいいダミーになってくれる。
向こうが擬態しているのならこっちだって偽物の人間で箱を開ければいいだけだ。
「あの宝箱を開けてきて」
作り出した土人形に指示を出しながら前を行くエルさんたちに目を向けると、岩石トカゲとの戦闘を始めたところだった。
岩石トカゲは岩石系の魔物の中ではチョロチョロと動きが速くて厄介なのだけれど、ハットリの敏捷性があればサポートは不要だろう。
練習を繰り返しているうちに、指先からほんの少しの風が起こせるようになってきた。
たしかにエルさんの言う通り、指先ではなくて手のひらを使う方がより大きな風が起こせそうではある。
でも、手のひらを向けるような不自然な動きを見せた時点で旦那様に避けられてしまうだろう。
だから銃の早撃ちのように、動く隙すら与えずにドン!と撃ちたい。
エルさんが聞いたら「だから! 人に向けて攻撃魔法使っちゃダメだって何度言えばわかるんだよ」と怒られそうなことを考えていると、後ろひとつ結びの三つ編みにしている髪をクイクイと引っ張られた。
土人形が戻ってきたようだ。
せっかくいま何かを掴みかけているところだったのに、集中力がそがれてひらめきが逃げていこうとしている。
「ちょっと待っててね」
そうだ、あの夜会のバラ園ではどうやったんだっけ。
旦那様と一緒にあの衝撃波を発動した時は、その前段階として指先に「怒り」が溜まっていた。
負の感情の揺れが「溜め」につながるのだとしたら、腹の立つことを思い出すのが一番手っ取り早いかも……。
あれこれ考えていたら、今度はグイっと髪を引っ張られた痛みで現実に引き戻される。
「いたたっ! 何……っ!」
これは土人形ではないと気づいたときにはもう手遅れだった。
強い力で後ろ側に引き倒されて、後頭部が硬いものにぶつかると同時にブチっというものすごく嫌な音が耳に響く。
引き寄せる力から解放された隙に素早く上半身を起こし、飛びあがって距離を取った。
頭が軽いんだけど!?
うなじに手を当てると、そこにあるはずの三つ編みがなくなっているではないか。
恐る恐る振り返ると、わたしのおさげをむしゃむしゃ咀嚼するミミックがいる。
「なっ、なんてことしてくれたのよおぉぉぉぉっ!」
わたしの悲痛な叫び声に気づいたエルさんがこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえるけれど、状況を説明している心の余裕はない。
わたしのおさげを返せっ!
おさげをごっくんと飲み込んで、わたしに向かって襲い掛かってくるミミックに向かって怒りの一撃を放った。
「お仕置きよっ!」
ドン!
大きな音と共に人差し指から放たれた衝撃波で、ミミックの体が吹っ飛んでひっくり返った。
背中の大剣を抜き、すぐに起き上がることができずにもがいているミミックに何度も振り下ろす。
「もうやめてあげなよ、ロイと変わんないじゃん」
呆れ声のエルさんに止められるまで、ギッタンギッタンにしてやった。
ハアハア肩で息をするわたしの目の前で、ミミックの残骸がキラキラと光の粒となって舞い上がり霧散して消えていく。
「こえーな、おい」
ハットリのつぶやきは聞こえなかったことにしてあげた。



