白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

 会長とヴィーが夫婦ってどういうことだとか、馴れ初めはとか、さんざん冷やかされた後に宴会がお開きになった。
 ビアンカの負担を考慮してロイパーティーメンバーおよび旧メンバーたちは総出で片づけや皿洗いを手伝う。

 明朝には大樹に花が咲くはずだ。
 今ここに残っているメンバーたちは、このまま夜通し飲み明かして開花を見届ける気なのかもしれない。

「まさかロイさんがラスボスだったとはな」
 グラスを傾けながら旧メンバーのトミーがしみじみつぶやいた。

「踏破したら一緒に花見しようぜって言ってたの、何だったんスかね?」
 他のメンバーたちも遠い目をしている。
 
「破天荒な人だったから、自分がラスボスだって気づいてなかったんじゃねえか?」
「あははっ、言えてる」

 まったくもってその通りだ。
 
 表向きロイパーティーのメンバーでもない部外者の自分がこの場にいつまでも残っているのは野暮だろうと酒場を出た。

 すると
「旦那様!」
 ヴィーが背中に飛びついて来た。

 驚いて振り返ると、ヴィーが泣きそうな顔でむくれている。
「どこに行く気ですか! またわたしのこと置いていく気だったでしょう」

「え?」
 何のことかわからず困惑していると、ヴィーが唇を尖らせて小声で言った。
「だってこのパターン、ロイさんがいなくなった時と一緒じゃないですか。全部終わったら、話せなかったことも話してくれる約束でしたよね?」

 そのかわいらしい上目遣いは反則だろ。
 
「わかった。じゃあ屋敷に帰ってベッドの中でゆっくり弁明するから、今夜は眠れないと思ってくれ」

 月明りでもはっきりとわかるぐらいにヴィーの顔が瞬く間に真っ赤に染まる。

 そんな妻にそっと口づけたのだった。