(一)この世界ごと愛したい





「俺が戻るまでに、国王軍全員首揃えとけ。」


「へ、陛下…。」


「戻り次第全員の性根叩き直してリンに頭下げさせてやる。」




国王であるハルを、続々と重役達が引き留めに掛かるが寧ろ返り討ちにされる始末。


その間も歩みを止めない。




ズンズンと進み続け、るうが馬の手配をして待つ城門へ辿り着いた。





「行くぞ。」


「ああ。」




ハルは振り返ることもなく、迷いもなく馬に跨り走り去る。


その様子を、慌てふためく人達と、懐かしいと目を細める人達が見送ることになった。






「…ごめんなさい。」


「王妃様が謝ることではありません。ハル様の怒りは当然です。我等にもっと力があれば…姫様を、一人で戦わせる結果にはならなかった。」


「亡き夫にしても、ハルにしても。リンのことは国よりも大事なのよ。私達はハルの言う通り、知らず知らずのうちにリンに甘えてただけね。」




ママはそう言って、ぎゅっと拳を握る。


その手にアルがそっと手を添える。





「大丈夫だよ、ママ。お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ママのこと大好きだから。」


「アル…。」


「僕には分かる。二人ともママに怒ってなんかないよ。だから元気出して?」


「…ええ。リンが帰って来るから、リンの好きな物をたくさん準備して待ちましょう。」





それぞれの想いが、星空に届いて。


煌めく星が河となり、私の元へ流れ着くだろう。