「俺が戻るまでに、国王軍全員首揃えとけ。」
「へ、陛下…。」
「戻り次第全員の性根叩き直してリンに頭下げさせてやる。」
国王であるハルを、続々と重役達が引き留めに掛かるが寧ろ返り討ちにされる始末。
その間も歩みを止めない。
ズンズンと進み続け、るうが馬の手配をして待つ城門へ辿り着いた。
「行くぞ。」
「ああ。」
ハルは振り返ることもなく、迷いもなく馬に跨り走り去る。
その様子を、慌てふためく人達と、懐かしいと目を細める人達が見送ることになった。
「…ごめんなさい。」
「王妃様が謝ることではありません。ハル様の怒りは当然です。我等にもっと力があれば…姫様を、一人で戦わせる結果にはならなかった。」
「亡き夫にしても、ハルにしても。リンのことは国よりも大事なのよ。私達はハルの言う通り、知らず知らずのうちにリンに甘えてただけね。」
ママはそう言って、ぎゅっと拳を握る。
その手にアルがそっと手を添える。
「大丈夫だよ、ママ。お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ママのこと大好きだから。」
「アル…。」
「僕には分かる。二人ともママに怒ってなんかないよ。だから元気出して?」
「…ええ。リンが帰って来るから、リンの好きな物をたくさん準備して待ちましょう。」
それぞれの想いが、星空に届いて。
煌めく星が河となり、私の元へ流れ着くだろう。

