ハルは私の言いつけ通り、るうをしっかり止めてくれる。
「お前はじっとしてろ。リンの掌で転がりやがって。」
「…絶対許さん。けど俺の不注意だ。とにかく先に行かせろ。」
「セザールの事情は知らんが、お前はリンに守られたんだ。いいから動くな。」
ハルの命令には逆らえないるう。
もう、今すぐ私の元へ駆け出したい気持ちはたぶん二人とも同じ。
そんな中、ハルが不敵に笑った。
「…どうかしてるな、俺は。」
「は?」
「死んでも守るし死ぬほど心配だが。これほど成長したリンを、俺はその様を早く見てえと心が踊る。」
ハルはもう何度目か天を仰ぎ、記憶に残る二年前の私の姿を想像して。
また笑った。
「今のリンもさぞ可愛いだろうなあ。」
「そこだけの話で行くと否定はしねえ。」
「リンの可愛さを二年も見られなかったことを、俺は生涯後悔するんだろうなあ。」
言ってることは馬鹿げているものの、その手は強く大刀を握りしめたまま。
ハルはすぐに気を引き締める。
「馬の手配だ。リンを迎えに行くぞ。」
「ああ。」
二人で私の元へ歩みを進める途中、ハルは小さく呟いた。
「…このまま行くと、二年じゃ済まねえか。」

