(一)この世界ごと愛したい





ハルは私の言いつけ通り、るうをしっかり止めてくれる。



「お前はじっとしてろ。リンの掌で転がりやがって。」


「…絶対許さん。けど俺の不注意だ。とにかく先に行かせろ。」


「セザールの事情は知らんが、お前はリンに守られたんだ。いいから動くな。」




ハルの命令には逆らえないるう。


もう、今すぐ私の元へ駆け出したい気持ちはたぶん二人とも同じ。






そんな中、ハルが不敵に笑った。




「…どうかしてるな、俺は。」


「は?」


「死んでも守るし死ぬほど心配だが。これほど成長したリンを、俺はその様を早く見てえと心が踊る。」





ハルはもう何度目か天を仰ぎ、記憶に残る二年前の私の姿を想像して。




また笑った。





「今のリンもさぞ可愛いだろうなあ。」


「そこだけの話で行くと否定はしねえ。」


「リンの可愛さを二年も見られなかったことを、俺は生涯後悔するんだろうなあ。」




言ってることは馬鹿げているものの、その手は強く大刀を握りしめたまま。



ハルはすぐに気を引き締める。









「馬の手配だ。リンを迎えに行くぞ。」


「ああ。」




二人で私の元へ歩みを進める途中、ハルは小さく呟いた。








「…このまま行くと、二年じゃ済まねえか。」