ハルは自分の大刀を片手に取り。
抑えきれない怒りを、この場へ向ける。
「この国中の人間全員呼んで来い。リンの犠牲の上でのうのうと暮らしやがって。俺がリンの痛みを教えてやる。」
「お、おやめ下さい!陛下!」
今にも暴れ出さんとするハルの前に。
剣を抜き立ちはだかったるう。
そんなるうを、ハルは今までにないほど冷たい目で睨む。
「そうだな、まずはお前だ。」
「……。」
「話によれば、お前もリンとセザールへ行ってたって?」
「ああ。」
「…お前にリンを渡さなくて正解だった。」
ハルはそう言って、るうに向かって大刀を振り下ろす。
周囲はもう慌ただしく避難する。
城を破壊するかの如く暴れるハルを、とにかく止めようと尽力するるう。
「何ですぐに連れ戻さなかった。」
「っ…リンの覚悟を、踏み躙ることはしたくなかった。」
「そのために誰だか知らねえ奴に嫁がせたって?お前の気持ちなんて薄っぺらいもんだな?」
「俺はリンを守るために着いて行ったんだ。」
ハルの思いも。るうの思いも。
それぞれ正解なんてないにも関わらず、二人の思いは交わることなく交差する。
「何をどう守ればこうなる。結局お前もリンを傷付けた一人に違いねえぞ。」
「…否定はしねえ。けど、俺はそれでもリンを側で守り続けたかった。」
「調子の良いことばっか言ってんじゃねえ。お前はただリンから離れられなかっただけだろうが。」
「頭に血上りすぎだ馬鹿。誰が好き好んで他の男と結婚する女を追い掛けて行くんだよ。」

