来たる会合の日。
いつも父が座っていた玉座へ言われるがまま、ドカッと偉そうに座るハル。
「ここまで待たせやがって。さっさと話せ。」
「…では、説明いたします。」
そこで語られる真実を。
ハルは、目を瞑って静かに聞いている。
ハルが眠った二年前から今日までのアレンデールの現状に。
気持ちが中々追いつかないのも無理はない。
父が戦死した状況も、私がこの場にいない理由も。全てを聞いたハルは聞き終わった後に、この場の全員に言い捨てる。
「…全員殺す。」
全てを聞いて、全てを理解した上で。
それでも許すことが出来ないハルは、溢れんばかりの怒りの色を隠すこともなく。
「親父が死んだのは戦国の常だ。仕方ねえと割り切る他ねえ。」
ハルだって、父の死を悲しく思っている。
だけど今悲しむことが出来ないほど、圧倒的に怒りの感情が爆発している。
「だがリンのことは、殺したって許せねえ。」
「陛下。王妃様のお気持ちもお察し下さい。民達を救うためには他に方法がなかったんです。」
「ふざけるな。民を救って、その後に戦えばよかっただろ。なんでお前等は平然と今もこうしてここにいる。」
「それは姫様が、自分が先陣を担うと我々に指示を…。」
ハルは玉座を蹴り飛ばし、玉座を破壊。
その破壊音と、ハルの殺気に当てられて押し黙るしかない周囲の重役達。
「その先陣が今も戻らねえのに、それでも指咥えてるだけのお前等は一体なんなんだ。」
「わ、我々は、姫様の仰せのままに…待機を…。」
「リンの犠牲の上で食った飯は美味いか?アイツの気持ちから目を逸らして良く眠れたか?」
「っ…!」
ハルはそのまま王の席から降りて、重役達を尚も責め立てる。
「こんな下らねえ国の王なんか俺は死んでもやらねえ。テメー等で勝手にやってろ。」
「へ、陛下っ!!!」
ハルはそのまま広間を出ようとするが、それを止めたのは王妃であるママ。
「…全ては、私の判断です。」
「……。」
「リンのこと、本当にごめんなさい。あの人が命に替えても守ったリンを…私が…っ!」
「…リンはな。本当は…強くなんかねえ。」
ハルは泣き崩れるママに向かって、言葉を紡ぐ。
「周りの期待に応えて、必死に守るべきものを守って、それでも守れなかった時は一人で泣くんだ。誰にも言わずに全部一人で抱え込んで。」
「っ…!」
「それでも平気な顔で笑ってたろ。それがどうしてか、考えたことがあるか?」
この場の全員が、ハルの言葉に胸を打たれて俯く中。
るうだけが真っ直ぐにハルを見つめる。
「自分が平然としてることで、不安が晴れるといい。思い悩まなくて済むといい。下を向かずに前を見てくれるといいって。そんなどこまでもお人好しで誰よりも優しいリンを…。」
ハルの殺気が、この場の全員を刺す。
「利用するだけ利用して、壊れてもおかしくねえ状況に陥れたんだぞ。」

