(一)この世界ごと愛したい




口ではそう言っていても、私には分かる。




もう、二年か。



ハルにようやく会える。



目を合わせて話ができる。笑い合ったり、喧嘩したり。そんな他愛のないことを、ずっと心から望んでいた。




それは私だけじゃなくて、るうも同じ。





「ハルの第一声なんだと思う?」


「腹減ったーだろ。」


「私も同じこと思ったー。」




きっと目覚めた後に知ることになるパパの死を、私の政略結婚を。



ハルは怒るだろうなと、そこが唯一心配なところではあるけど。ハルは強いからきっと大丈夫。





「るうのお誕生日の次の日に出発ってことにしとこうか。」



「ああ、分かった。」






そんな私はこの日の夜。


ハルに向けて手紙を書いた。



いざ筆を持つと、話したいこと伝えたいことが次々に溢れてくる。


でも出来るだけ簡潔に、私の策を散りばめた文章を書き記していく。







「…ごめんね、ハル。」




一人の夜。


薄暗い部屋の中で、ぽつりと謝る私。





この手紙でハルの想いも心も、裏切ることになるけれど。



もう、私も後には引けない。


きっとハルにも届くだろう。




届いた後、自分を責めてしまうだろう。




そこまで先を読んでしまえるからこそ、私は誰も見てないのをいいことに。







…静かに涙を流した。