だから、逃げちゃだめなの。
「そうか。」
「あ…きと…?」
アキトは私をベッドにそのまま優しく押し倒し、そのまま覆い被さるように私の上にいる。
「じゃあ、今だけ忘れてろ。」
「っ!」
それはもう、その言葉の通り。
頭が真っ白になるほどのキスの嵐が私に降り注ぐ。
「っあ、き…っ!!」
止めようにもアキトは私の両手を押さえ、抵抗することさえ許してくれない。
段々と、私は抵抗する力さえなくなっていく。
「…リン。」
唇が離れ。
アキトが、私の名前を呼ぶけど。
私は返事をする余裕もなく。ようやく呼吸ができると喜ぶ肺に酸素を送るので精一杯。
「今日は可愛くねえと思ってたけど、俺の勘違いだなあ?」
アキトはニヒルな笑顔で私を見つめる。
「今まで見てきた中で、今が一番可愛い。」
「〜っ!?」
思わず素直に赤面する自分を殴りたい。
だってこんな至近距離で、こんな状況で。そんなこと言われたって。
「…けど、土俵にすら立ってない俺はここまでだな。」
土俵?
「俺の城は、こないだ戦で落としたディオン城のもう少し北にある。」
「へ?」
「お前の持てる限りの最速で来い。あんまり遅えとアレンデールまで迎えに行く。」
「はい?」
なんてめちゃくちゃな。
アキトがアレンデールに来てしまったら、それはもう戦になってもおかしくない。
「約束の一ヶ月、楽しみにしてる。」
「…う、ん?」
アキトはそう言ってベッドから降り。
そして部屋から勝手に出て行ってしまった。
どこまでも豪快で。羨ましいほど自由で。眩しいほど頼もしいその背中が。
私の目に焼き付いて、しばらく動けなかった。

