(一)この世界ごと愛したい





だから、逃げちゃだめなの。





「そうか。」


「あ…きと…?」




アキトは私をベッドにそのまま優しく押し倒し、そのまま覆い被さるように私の上にいる。







「じゃあ、今だけ忘れてろ。」


「っ!」





それはもう、その言葉の通り。



頭が真っ白になるほどのキスの嵐が私に降り注ぐ。






「っあ、き…っ!!」




止めようにもアキトは私の両手を押さえ、抵抗することさえ許してくれない。



段々と、私は抵抗する力さえなくなっていく。






「…リン。」





唇が離れ。



アキトが、私の名前を呼ぶけど。


私は返事をする余裕もなく。ようやく呼吸ができると喜ぶ肺に酸素を送るので精一杯。






「今日は可愛くねえと思ってたけど、俺の勘違いだなあ?」




アキトはニヒルな笑顔で私を見つめる。










「今まで見てきた中で、今が一番可愛い。」


「〜っ!?」




思わず素直に赤面する自分を殴りたい。



だってこんな至近距離で、こんな状況で。そんなこと言われたって。








「…けど、土俵にすら立ってない俺はここまでだな。」




土俵?






「俺の城は、こないだ戦で落としたディオン城のもう少し北にある。」


「へ?」


「お前の持てる限りの最速で来い。あんまり遅えとアレンデールまで迎えに行く。」


「はい?」




なんてめちゃくちゃな。


アキトがアレンデールに来てしまったら、それはもう戦になってもおかしくない。







「約束の一ヶ月、楽しみにしてる。」


「…う、ん?」




アキトはそう言ってベッドから降り。


そして部屋から勝手に出て行ってしまった。






どこまでも豪快で。羨ましいほど自由で。眩しいほど頼もしいその背中が。



私の目に焼き付いて、しばらく動けなかった。