私が部屋に戻る頃には深夜三時を回っていて。
そりゃこれだけ眠いわけだと納得。
「送ってくれてありがとー。」
「ああ。」
部屋には入らず、ドアの前に立ち尽くしているアキトにお礼を伝えて。
私はドアを閉めようとした…が。
「…ちょっと待った。」
「…?」
アキトは閉まりかけたドアを再び開けて、部屋の中へズカズカ入る。
帰るんじゃないんかーい。
私まあまあ眠いよー?
「どうした…の。」
言い終わる前に、私はアキトの腕の中。
「ルイにバレたら怒られるな。」
「え?」
「こっちの話だ。」
るうがどうしたんだろうと思いつつ。
この現状もどうしたと思わずにはいられない。最近アキトのハグ率も高い気がする。
「なんでだろうな。」
「何が?」
「気持ちを否定すればするほど、離したくなくなるって厄介すぎねえか?」
「うん?」
なぞなぞのようなことを呟くアキト。
「ルイといいレンといい、物好きだよな。」
「え、私の悪口だったの?」
「違え。だって考えてみろよ。お前がどっちかを選べばどっちかは必然的に報われねえ。それでも気持ち伝えて…って。俺には考えられねえなと思って。」
私が選ばなかった方は…報われない。
私は自分の気持ちばかりに目を向けて考え込んでいたけど。
言われてみれば確かに、そうか。
誰かを傷付けてまで恋愛をしないといけないものなのかな。ならばいっそ、誰も選ばなければ…って、それはそれで二人とも傷付けるのか。
「…戦に例えるなら、攻めなきゃ勝ちはないだろうからって分かるんだけど。」
「戦?」
「私は勝ちを計算してじゃないと戦わない派だから、私も二人の気持ちは理解出来ない。」
「…なるほどな。」
戦で例えるなって話なんだろうけど。
二人に勝ち目がないとかそういう話じゃなくて、私もたぶんアキトと同じタイプなんだろう。
負ける可能性がある戦には、出陣さえ億劫になる。
「要は勝ち目が出てから伝えりゃいいってことか。」
「私ならそうするかなーと。」
「その前に他から討たれたら、それはそれで仕方ねえと諦めるしかねえな。」
「…うん、そうだね?」
なんで私はアキトとこんな恋愛を戦に見立てた話をしているんだろう。
そして何故か物凄く共感している。

