(一)この世界ごと愛したい




るうは見たこともないスピードで、アップルパイを準備していく。



手元が見えないほどの早技。




「…すげー…。」


「あとは焼くだけだ。火は通りやすくしといたから少し待て。」




数十分で焼き上がるだろうアップルパイを、二人で待つ摩訶不思議な状況。




「…あんまりリンを夜遅くまで付き合わせるなよ。朝起きねえんだから。」


「保護者か!?」


「あいつの寝起きの悪さ舐めんなよ。俺は数回死にかけてる。」


「…まじか。」




そこまで寝起き悪いと思っていない私。


無自覚ほど怖いものはないですね。







「鬼人が起きたらお前どうすんだよ。」


「どうって、今までの生活に戻るだけだろ。ハルがいればアレンデールの軍事も落ち着く。リンだけに負担がいくこともなくなる。」


「じゃあ次会う時は敵かもなあ?」


「それはそうだろうな。」




ハルに限って、負けはしないだろうけど。


アキト軍と戦うとなると、ハルは嬉しくて嬉しくて堪らないだろうな。ハルにとってこんな好敵手はいない。





「鬼人と戦なんて考えただけで燃えるなあ。」


「お前は呑気だな。」


「鬼人はまさに最強の文字が似合う男だ!俺の目指す将軍の姿そのものだ!」


「ハルを目指すなら、俺に負けてるようじゃ話にならねえよ。」