アキトは一目散に走って。
一つのドアの前に立ち、そのドアを叩く。
「おい!俺だ!!!」
「ああっ!?」
部屋からるうが出てきて、アキトを見て怪訝そうに顔を顰める。
「何時だと思ってんだよ…。」
どうやら寝ていたところを妨害されたるうは、機嫌が良くないようで。
アキトを睨むが、アキトはお構いなし。
「アップルパイを教えてくれ!!!」
「…は?」
「リンが食いてえって言うんだが、どうやって準備すればいい!?」
「…リン?」
まずなんでこの時間にこの状況で、私の名前がでるのか不思議に思うるう。
少し考えて、状況を把握したるう。
「断る。リンどこだ。」
「そこを何とか!!!」
アキトは事情を説明して、るうを説得しようと試みるも。るうは首を縦には振らない。
それはそうだ。時間は深夜。
私をこんな夜中まで付き合わせている事実でさえ、るうには許せないはずだ。
「このままじゃ俺は奴隷にされる!だから頼む!」
「ふざけんな。とりあえずリン返せ。」
「今やっと普通に笑ってんだ。俺は出来るだけそのままにしてやりてえと思ってる。」
アキトの真剣な頼みに。
るうはやれやれと一息ついて。
「随分必死だな?」
「ああ!?」
「本気にはならねえんじゃなかったのか?」

