(一)この世界ごと愛したい





アキトは一目散に走って。


一つのドアの前に立ち、そのドアを叩く。




「おい!俺だ!!!」


「ああっ!?」



部屋からるうが出てきて、アキトを見て怪訝そうに顔を顰める。





「何時だと思ってんだよ…。」




どうやら寝ていたところを妨害されたるうは、機嫌が良くないようで。


アキトを睨むが、アキトはお構いなし。






「アップルパイを教えてくれ!!!」


「…は?」


「リンが食いてえって言うんだが、どうやって準備すればいい!?」


「…リン?」




まずなんでこの時間にこの状況で、私の名前がでるのか不思議に思うるう。



少し考えて、状況を把握したるう。






「断る。リンどこだ。」


「そこを何とか!!!」




アキトは事情を説明して、るうを説得しようと試みるも。るうは首を縦には振らない。



それはそうだ。時間は深夜。




私をこんな夜中まで付き合わせている事実でさえ、るうには許せないはずだ。





「このままじゃ俺は奴隷にされる!だから頼む!」


「ふざけんな。とりあえずリン返せ。」





「今やっと普通に笑ってんだ。俺は出来るだけそのままにしてやりてえと思ってる。」





アキトの真剣な頼みに。


るうはやれやれと一息ついて。







「随分必死だな?」


「ああ!?」





「本気にはならねえんじゃなかったのか?」