(一)この世界ごと愛したい





二人は目を点にして。


驚いているような呆れているような、そんな顔で私を見る。




「し、城ってお前…。」


「無理?」


「当たり前だろ!?俺が単独でどうこう出来ることじゃねえぞ!?」




そうなのか…。


じゃあそれは別の機会にしよう。





「…意外とないもんだねー。」


「奴隷と城以外だ。早くしろ。」




負けたくせに。


始まる前はなんでもいいって言ったくせに。




でも、このトランプの会が思いの外楽しくて。結構満足してしまった私は、もうこれ以上に望むことなんてなくて。






「願いってないもんだなー。」


「欲のねえ奴。」


「…あ。」




じゃあ、これはどうだろう。






「アップルパイが食べたい。」




私は名案を思いついた。



それを聞いてアキトはレンに助けを求めるも、レンも用意の仕方を知らずにプイッとそっぽ向く。








「…ちょっと待ってろ!!!」


「え、アキト今じゃなくていい…って。」




私が言い終える前に、部屋を飛び出したアキト。



残された私とレンはトランプを片付けて、アキトの帰りを大人しく待つことにした。