(一)この世界ごと愛したい




パニック継続中の私は固まるだけ。



アキトは小さく舌打ちして、邪魔すんなよとるうに文句を垂れている。




「いい度胸だな。」


「安心しろって。本気で狙ったりしねえよ。レンの嫁だしなあ。」


「…本気じゃねえなら手も出すな。」


「優等生かよ。」




本気では…ない。


つまり結局、キスしたいかどうかでは好きかどうかは判断できないってことか!?



ただの振り出しじゃん!!!





「じゃあ話は済んだし俺は帰るぞ。」


「……。」


「リン、お前は手を伸ばしたいと思ったら素直に伸ばせばいい。それが自ずと答えになる。」


「…うん?」




手を伸ばす、くらいなら。


分かりやすいし出来るかもしれない。




アキトはるうに怒られて帰って行ってしまいました。その背中が少し切なく見えたのは、気のせいだったんだろうか。










誰も知らないところで。





「本気じゃねえなら…か。」





アキトは、静かに呟きながら。


自分の帰るべき場所へと足を向けた。