我慢も限界に近いところまで来た時、ようやく再び扉が開いた。
「遅いぞ、レン。」
「申し訳ございません。」
颯爽と赤いカーペットを歩く男。
遅れて来たくせに、嫌に堂々と。謝っているにも関わらず悪びれた様子はない。
女の私から見ても綺麗な顔。
私と同じ金色の髪。
そして海のように深い、紺碧の瞳。
その瞳と、私の緋色の瞳の視線が交わる。
一瞬、あまりに綺麗なこの瞳に吸い込まれるかと…本気で思った。
「……。」
「…初めまして。アレンデールから参りました。リンと申します。」
てっきり、先に挨拶してくれるのかと思いきや何にも喋らないので焦って挨拶する私。
ほんと偉い!私っ!
「…第三王子、レン・セザールです。」
「この度は、私と婚姻の儀を交わしてくださること、深く感謝申し上げます。」
「…俺断ったんだけど。」
は…?
この状態で私が断られるパターンってあんの!?
もう来ちゃったよ!?
「レン、この結婚は義務だ。何度も言わせるな。」
「俺は結婚など望んでいません。」
「お前が望もうが望むまいが関係ない。それと神の御前も等しいこの時に、お前は戯けたことを言うな。」
どちらかと言うと戯けはお前だよ、阿呆王。

