(一)この世界ごと愛したい




誰だこいつ。


第三王子がこの場にいないことが分かったので、もう周りをあまり見ていなかったが。



危ない危ない。今は僅かな情報も大事だったんだ。




「えっと…あなた様は…?」


「失礼いたしました。私は第二王子のスーザンと申します。以後、お見知り置きを。」


「スーザン様、どうぞよろしくお願いいたします。」




よろしくなんてしたくもない。


下らないことしか言わないならさっさと消えてほしい。




…けど第二王子ならば、顔は覚えとこう。





「ああ、本当になんと麗しい姫だ。」


「スーザン下がれ。お前には先日他国の姫をやっただろう。」


「父上、あれはもう要りませぬ。この姫こそが私に相応しい相手だ。」


「あの国との条約は反故にはできん。それに嫁の差し替えなど出来ん。他の女とは訳が違うのだ。神への冒涜は許さん。」




うわー。


なんて低俗な会話だ。馬鹿馬鹿しい。