「このセザールという国では、医療技術を外へ拡散出来ないよう極めて強い法が定められている。」
「…なるほど。レン様の完成させた薬も例外ではないと。」
「ええ。そして私が鬼人をあの毒で討ち倒したことは父を始めとして多くの王族…医術師たちも知っている。」
つまり、ハルが目覚めることで。
それがレンの罪を証明することになり、何よりも重い死刑が課されると。
「姫はどうしますか?」
「……。」
「ご自身の兄上とレンを天秤にかけて、どちらを救いたいと考えますか?」
ハルが目覚めたらレンは殺され。
レンを守ろうとすればハルは目覚めない。
「…エリク様は、まずご自身の身を案じてはいかがですか?」
「私の罪は姫次第だろう。」
「私を当てにしないでください。こう見えても、斬りたいと疼く腕を抑えているところです。」
「それは大変だ。しかし私なら鬼人もレンもどちらも救えると言ったら、姫の腕は落ち着くだろうか。」

