(一)この世界ごと愛したい





そして、私のこの姿に一番喜びの色を見せるのは。





「素晴らしい。」


「……。」




混戦に混戦を重ねている中。


私の視界に不自然に入り込んできたエリク。



私を誘き出す罠だと知って、私はその罠へ飛び込む。近くで戦っていたるうとアキトに気付かれぬように。





そっと、素早くエリクの前まで移動した。






「その瞳…その姿…まさにアテナの化身だ。」


「エリク様の中のアテナ像は陳腐ですね。」


「謙遜せずとも良い。」




してねーよ。




「それで、此度の戦の終焉はどうされますか?」


「まさか火攻を雨で打ち消されるとは思わなかったよ。良い策だと思ったんだがな。天はやはり姫に味方してしまう。」




違いまーす。


歴とした私の才能でーす。





「それでは私の勝ちでよろしいですか?」


「城は落とされた。この戦はセザールの勝利だろう。」


「では潔く退散いただき、執拗にレン様を付け狙うのはお止め下さい。」







「それは出来ない。国同士の決着は付いても、我々兄弟の勝敗はまだ決していない。」