「しばらくは起きねえはずだけど、もし起きたら呼んでくれ。」
やはりどうしても落ち着かないるうは、天幕から出て周囲の警戒に当たる。
確かに、セザールへ着く前にエリクはどうしてもレンを討ちたいはず。仕掛けてくるならこんな好機はない。
「…アキトごめん。」
「何がだよ。」
「俺のせいで、アキトの兵たちもかなり負傷してるし。助けられなかった人もいる。」
「ばーか。戦やってんだから死人も怪我人も出る前提で俺等はここにいるんだ。」
レンはレンなりの責任を感じている。
「リンにも言われた。命を見捨てる覚悟を決めろって。」
「ほーう。」
「…それでも始まってみると、難しいものだなって思ったよ。」
「お前はそれでいいんだよ。リンもちゃんと分かってるはずだ。」
アキトの言う通り。
ちゃんと分かってる。レンはそのままのレンでいいと、私もそう思う。
「それに、俺からすればどの口が言ってんだって話だけどなあ?」
「…確かに。」
レンはそれを聞いて少し笑う。
そうだよね。
実はそんな偉そうなことを言った私が、一番人を見捨てられない甘い性格なのを。
アキトは見透かしてしまうんだもんな。

