「敵が丘を包囲した時に、突破するのは簡単だろうけど。そうなると同士討ちも同じこと。同じ国の民同士戦うのを…やめさせたかった。」
「その正義感は感服に値するね。」
「…でも、アキトたちを丘に残って戦わせた私が火攻を誘ったことに変わりない。」
だから、私は謝ることしかできない。
丘に火の手をあげさせたのは、紛れもない私だ。
「だからリンは、戦の日取りをギリギリまで決めきれなかったんだね。」
「…そう。条件は夜襲の時に月を覆い隠す雲がかかること。そしてさらにその後火攻を打ち消す雨が降ること。この条件が揃う日を、ずっと待ってたの。」
今となっては隠す価値もないので、素直に種明かしする私。
るうでさえ、その事実に驚きの色を見せる。
「俺、リンと戦になったら勝てる気しないよ。」
「そうでもないよ。正攻法じゃなきゃ、私を討つのは簡単だからね。」
「ルイを人質に取るとか?」
「流石トキ、大正解。」
そう。
私を討ちたいなら、まず身近な人間を手中に収めてしまえばいい。
そうなれば、必然的に私は無力と等しくなる。
「勝手に人質にすんな。」
「…うわ、痛そ。」
レンの治療真っ最中のるうは、刀傷がそれはそれは痛そうです。

