(一)この世界ごと愛したい




だよねと。


トキが再度考え込むので。





「あと一時間あればこの雨はもう止むから。それからの移動で大丈夫。」


「リンは天候が読めるの?」


「あれ、アキトに聞いてない?」




トキはアキトを睨む。


そしてアキトは私を睨む。




「お前が誰にも知られたくねえって言ったんだろ!?」


「敵にはね。知られていいことないもん。」


「…トキ聞け!悪気はなかったんだ!!!」




アキトはトキに、雨の中天幕から蹴り飛ばされて外に飛んでいった。



…うん、なんかごめん。





「それで“動くな”の指示か。そんな策を思いつくのも実行するのも最早恐ろしいよ。」


「…ごめん。」


「結果リンが正しい。敵を欺くためにはまず味方からってことでしょ。」




仰る通り。


この丘に布陣を構えることで、火攻の可能性を考えた。



どうしてもこの丘の利を手放したくない私は、丘を手放す方法ではなく、火攻を無効化する方法を選択した。