(一)この世界ごと愛したい





「……。」


「……。」




人の感情とは難しいものだ。



つい数時間前、幻聴でなければ私のことを好きだと言ったはずのレンだけど。




今は絶対嘘だと思えるほど無表情。







「…一応勝ったよ?」


「…うん。」


「初陣初勝利だよ?」


「そうだね。」




さ、冷めてる…!!!



私初陣で初勝利の時なんて、胴上げしてもらって盛大に喜んだの覚えてるけど!?





「もう少し喜んでもいいじゃん?」


「……。」


「…不謹慎でしたごめんなさい。」




すんごい顔で睨まれたので謝る私。




そうかそうか。



医術師のレンと軍人の私とでは、勝利に対する価値観が違うんだ。









「…理解が出来ない。」


「うん?」







「仮にでも結婚した相手が、こんなに傷だらけになってるのに。勝ったからって喜ばなきゃいけないのが戦なら、俺はやっぱり二度とごめんだよ。」