(一)この世界ごと愛したい










「…自分が怖いの。」



「……。」



「もう、このままじゃ…きっと。私は私じゃなくなる気がする。」



「…リン?」









「私は…戦神になんて、なりたくなかった。」






だけど、それでも奇跡を。



この丘に留まり戦い続けた人たちを守る力を。










「…でも、私はそれができちゃうから。」






仰いだ空から。






大粒の雨が降り注ぎ始める。












「だからまた結局みんな私を、戦神だって…言うんだろうね。」






その雨たちが、丘の炎を消し去ってくれる。




炎が消えたお陰で、丘へ足を踏み入れることが出来た私とるう。





るうは不思議と何も言わない。



ただ私の横で、肩を並べて歩いてくれている。








「…遅くなってごめんね。」




丘をやっとの思いで登った先に、その頂上付近に固まっていたアキト軍の皆さんがいて。



あまりにボロボロな私達に驚いている。





炎を消し去る恵みの雨は有り難いけれど、疲れた身体と、傷口には少し辛い。



凝固しきれない血液がドクドクと流れ出る。






「リンっ…!」



「…レン、ただい…ま。」