『では姫よ。いずれ月下の光の下で、美しい姿を見るのを楽しみにしているよ。』
いつかのエリクの言葉が蘇る。
「…相変わらず美しいね。」
「思ったより兵が多いですね。てっきり陛下に疑いの目を向けられないよう気を配られるかと考えていましたが、私が読み違えたようですね。」
「いや、間違いではない。セザールから連れてきたのは僅か。姫の読み通りだ。」
この場にいる兵くらいしか、引き連れて来なかったと。
じゃあ本陣に攻め入る軍はどこから…と考えてすぐ、このエリクという男の恐ろしさを知る。
「…ノイン将軍を侮りすぎました。」
「ノインの知る所ではないからね。君の想像は正しい。」
正しいと言われても嬉しくはない。
ノイン将軍は、私の注意を惹くための囮。
本命は…。
同じ南門で奮闘していたヨーク将軍か。
だとすれば合点がいく。
城攻めの最中にノイン将軍の裏切りにあって尚も、怒りもせず黙々と戦い続けたヨーク将軍は、こうなることを知っていたんだ。
だからこそ、寡黙を貫いたわけね。
「まさか自軍の将軍二人に裏切られるなど、予想もしませんでした。流石ですね。」
「姫に褒められるとは、光栄なことだ。」
褒めてないよー。
皮肉ですからねー。
「こちらも、まさか姫が自身の身をそこまで削る戦い方をすると想定していなかった。怪我をさせてすまない。」
「謝罪はいりません。道を開けて下さい。私にはまだ、やるべきことが残っていますので。」

