ちょっと。
誰か私を一発殴ってほしい。
そう思っていると。
シロがそっと私の背中を頭で押す。
シロに心配される私って…。
「ごめんシロ。」
とりあえず謝ってみる。
前足で地面を掻く姿が、まるで己を見ろと。そして落ち着けと。そう言っている気がして。
「…そうだね、切り替える。」
私は自分の顔をパンっと叩いて前を向く。
最後尾のクロード軍が到着し、将軍が目に入ったので私は一先ずクロード将軍の元へ赴く。
そして全体の配置と私の動きをざっくり説明して、私は頭を下げる。
「かなり勝手をしますが、どうかお許しください。」
「姫様、顔を上げてください。助けられているのはこちらです。どうかご武運を。」
「ありがとうございます。予定通り、他の平地戦攻略はお任せいたします。」
「確かに承りました。」
優しいクロード将軍に、私の気持ちもかなり楽になった。
素早く隊列が整えられ。
私もるうとサクの元へ向かおうと動いた。
「リン!!!」
「…アキト?」
もうとっくに丘奪取班として配置に着いているはずのアキトが、私目掛けて走ってくる。
「ちゃんと見てるからって、伝えんの忘れてた。」
私の戦を見ていてくれると。
戦神じゃない私の戦を。
「…じゃあ、より頑張らなきゃだね。」
「死んでも死ぬなよ。」
「心配しなくても、私を討てる人なんてこの場にはいないよ。」
そう言って笑った私の頭をぽんぽんと撫でてから、アキトは自分の配置へ走り出した。

