(一)この世界ごと愛したい





ちょっと。



誰か私を一発殴ってほしい。





そう思っていると。


シロがそっと私の背中を頭で押す。




シロに心配される私って…。








「ごめんシロ。」




とりあえず謝ってみる。



前足で地面を掻く姿が、まるで己を見ろと。そして落ち着けと。そう言っている気がして。





「…そうだね、切り替える。」



私は自分の顔をパンっと叩いて前を向く。






最後尾のクロード軍が到着し、将軍が目に入ったので私は一先ずクロード将軍の元へ赴く。



そして全体の配置と私の動きをざっくり説明して、私は頭を下げる。




「かなり勝手をしますが、どうかお許しください。」


「姫様、顔を上げてください。助けられているのはこちらです。どうかご武運を。」


「ありがとうございます。予定通り、他の平地戦攻略はお任せいたします。」


「確かに承りました。」




優しいクロード将軍に、私の気持ちもかなり楽になった。



素早く隊列が整えられ。




私もるうとサクの元へ向かおうと動いた。









「リン!!!」


「…アキト?」




もうとっくに丘奪取班として配置に着いているはずのアキトが、私目掛けて走ってくる。








「ちゃんと見てるからって、伝えんの忘れてた。」




私の戦を見ていてくれると。



戦神じゃない私の戦を。






「…じゃあ、より頑張らなきゃだね。」



「死んでも死ぬなよ。」



「心配しなくても、私を討てる人なんてこの場にはいないよ。」




そう言って笑った私の頭をぽんぽんと撫でてから、アキトは自分の配置へ走り出した。