(一)この世界ごと愛したい





なにもこんな時に。



なにも開戦前に。







…そんなこと、言わなくていいのに。







「…リン?」



「っ……。」




目から一粒、涙が頬を伝うのがわかる。






「…アキトのばか。」



「泣くなよ。」






戦神だと、アテナの化身だと、世間が騒ぎ出した時。



誰も私自身を見てはくれなくなったあの時に。





私はもう、ただ国を守り民を守る戦いには戻れなくなってることに。







本当は、ずっと前から気付いていた。








「だから何回も言ったんだ。お前はそんなにタフじゃねえって。」





このままの状態で戦を続ければ。



私はきっと、戦そのものに呑まれてしまう。





私の名で、姿で、全てを壊してしまい兼ねない。



そのことに気付いているのは私自身と。ハルだけだと思っていた。






もう私は戦神としてしか生きられないのではないかと、漠然とした恐怖が足元を固めている。



鳥籠に閉じ込められている以上、私はもうただのリンには戻れない。







「アキト…。」



「馬鹿はお前だ。」





アキトは私を、その腕に閉じ込めて。



そのハルに似た温もりが、私を安心させてくれる。