なにもこんな時に。
なにも開戦前に。
…そんなこと、言わなくていいのに。
「…リン?」
「っ……。」
目から一粒、涙が頬を伝うのがわかる。
「…アキトのばか。」
「泣くなよ。」
戦神だと、アテナの化身だと、世間が騒ぎ出した時。
誰も私自身を見てはくれなくなったあの時に。
私はもう、ただ国を守り民を守る戦いには戻れなくなってることに。
本当は、ずっと前から気付いていた。
「だから何回も言ったんだ。お前はそんなにタフじゃねえって。」
このままの状態で戦を続ければ。
私はきっと、戦そのものに呑まれてしまう。
私の名で、姿で、全てを壊してしまい兼ねない。
そのことに気付いているのは私自身と。ハルだけだと思っていた。
もう私は戦神としてしか生きられないのではないかと、漠然とした恐怖が足元を固めている。
鳥籠に閉じ込められている以上、私はもうただのリンには戻れない。
「アキト…。」
「馬鹿はお前だ。」
アキトは私を、その腕に閉じ込めて。
そのハルに似た温もりが、私を安心させてくれる。

