(一)この世界ごと愛したい





世の中はどうして、こう単純ではないんだろう。




「…レン大丈夫?」


「正直疲れる。けど、大丈夫だよ。」



顔に疲れたって書いてるもんね?


無理もない。慣れない進軍で、私はさっきまで休めてたからいいけど、レンは休まずここまで良く頑張ってると思う。



アキト曰く、レンは体力ないらしいし。





「…少し予定変えようかな。」


「え?」


「次のヨーク将軍のとこ回り終わったら、アキトのとこは少しやり方変えるね。」




そもそもアキト軍は私が士気を上げなくても、アキトが何とか出来るだろうし。


兵の不安だけを取り除くことを考えよう。




「…姫はやっぱり凄いね?」


「今日はもう一生分褒められてる気がするよー。」



もう頭が混乱するほどに。


自分でそうなるよう仕向けたものの、予想を上回る兵たちの猛烈な熱。




「もう一踏ん張り、頑張ろ!」


「うん。」



そうして、次のヨーク軍も同様に将軍へ挨拶してから、各野営地を回らせてもらって。


この三軍を回るだけで、もうかなりの時間を費やした。



アキト軍へ戻る頃には、既にごろんと寝ている人もちらほらいるけど。


中には膝を抱えて丸くなってる人もいる。





「じゃあ戻ろうか。」


「本当に回らなくていいの?」


「うーん。寝れる人は寝かせてあげたいし、ちょっと私も考えてみる。」




一先ず天幕へ戻る私とレン。


るうと一緒の天幕を使うレンと、そっとその天幕を覗くと。



るうは横になって大の字で寝ていて。




「…じゃあ、レンもゆっくり休んでね。」


「君も無茶しないでよ?」


「私は大丈夫。」




るうを起こさないように、私は足早に立ち去る。


そして、アキト軍野営地の脇にある崖をぴょんぴょんと登る。