「姫…。」
「…もう戻ってる?」
自分ではちゃんと確認の仕様がないので、私はレンに自分の目を指差して聞く。
「いつも通りだよ。」
「…よかった。」
少し安心した。
いつぶりだろうと考えるほど久々だったけど、あの瞳の色はいつもに増して不気味に見えるから。
「るうとアキトは?」
「君の部屋じゃないかな。俺は治療道具取りに部屋に一旦戻ったら、ここで君が泣いてるように見えたから。」
目がいいんだね、レンは。
「あの瞳は炎と相違ないから、鎮火してるところだったの。」
「生まれつき?」
「うん。いつも怒りの感情が限界まで来ると、目の奥に炎が灯るの。」
「……。」
医術師のレンが不可解そうな顔をしてるから、余程珍しいことなんだろう。
「一時的なものだし、私がそんなに怒ることなんて早々ないから大丈夫だよ。心配しなくて。」
「…君は大丈夫が口癖なんだね。」
「そんなに言ってる?」
「さっき塔の中でも何回も聞いた。一番傷だらけで、一番辛い思いをして、誰よりも悲しんでる君が、大丈夫って言うたびに俺は不安になる。」
傷付いていても、辛くても、悲しくても。
それでも前を向いて歩かなきゃいけないから。
大丈夫だって私は自分自身に暗示をかけていたのかもしれないなと、言われてから気付いた。

