「ちょっとアキト、リン連れて帰ればよかったじゃん?」
私の部屋からの帰路。
トキがアキトに文句を伝える。
「…あいつは王宮から出られねえよ。」
「は?」
「ここはリンの鳥籠だ。陛下の許可なく外には出られねえ。」
それを聞いたトキは、少し肩を落とす。
「…それもそうか。自国を犠牲にしてまで手に入れた戦神だもんね。」
「ああ。」
「けどリン、よく大人しくしてるね。自分勝手に飛び出して行きそうな性格なのに。」
トキは不思議そうにアキトに聞く。
確かに。外から見た私は、王から手厚い恩恵を受け何不自由なく王宮でぬくぬくと暮らす恵まれた姫。
「衛兵くらい一人で蹴散らして、出ようと思えばリンはいつでも出られる。」
「だよね。」
「それをしねえのは、自分が王宮を出ることで起こり得る事態を分かってるからだろ。」
まず怒り狂ったセザール王は、再びアレンデールを攻めるだろう。
そして、レンにも迷惑がかかる。
今となっては、アキトやトキにも。私に縁がある人にまで剣を向けられ兼ねない。
…私は全部、わかってる。
「リンが一番辛いに決まってる。」
「…俺には想像も出来ないよ。こんなとこにずっと閉じ込められる生活なんて。」
「……。(ずっと…じゃないだろうけどな。)」
二人はそんな話をしながら、王宮の外へ帰って行った。

