(一)この世界ごと愛したい






「…やっぱり、俺は戦は好きになれない。」



レンはそう言って、私を見る。





「好きにならなくていいと思うよー。」


「……。」


「私の心配なんてしなくていいから。」


「…それが出来れば、幾らか楽そうだね。」




つまり、出来ないってことか?



レンの不安を解消できる方法を、私は色々と模索する。





「…憶測だけど。私は戦う相手に大体どれくらいの確率で勝てるか計算するのね。」


「え?」


「夜襲で討つ将は全然知らないけど、それでも負けることはたぶんないと思ってる。だから行くの。」




負けると分かってる場所へ自ら乗り込むほど、私は馬鹿ではない。






「エリクの私への歪みきった感情を、もう見て見ぬふりはしない。」


「……。」


「ディオン兵は十中八九、私を殺さないように言われてるはずだよ。そうじゃなきゃ私だって流石にこんな無謀なことしないよー。」




…ま、これも知らんけど。


とりあえず安心させてあげようと、それっぽく言っております。



嘘ってことはないけど、確信はない。






「だから、大丈夫…ね?」


「君はどうしたって止まりそうもないね。」




レンはそう言って、少しだけ笑った。